ERPソフト最大手のSAPがHANAでさらに躍進?! 企業研究

今までも十分強かったのに、さらに強くなった企業があります。

 

その企業はSAP

 

ドイツに本社を置く、ヨーロッパ最大級の企業向けソフトウェアの会社です。

 

そんな同社の2010年12月期の売上高が約125億ユーロだったのですが、その5年後の2015年12月期の売上高は、約208億ユーロになったのです。

そのままでも十分に経営していくことができたのに、更なる飛躍を成し遂げ業績を伸ばしました。

また、その成長率も高く、まだまだ成長すると考えられています。

 

同社はどのようして、この成長を実現したのでしょうか?

 

SAPって…?

 

先ほど少し触れましたが、SAPは、ヨーロッパで最大クラスの企業向けソフトウェアの会社です。

1972年に元IBM(アメリカ)の5人の技術者が設立した会社です。

商品は、会社内の会計や生産、販売に関するデータを一元的に管理して、会社内の経営資源をそれぞれに合った配分にできるように支援するというERP(統合基幹業務システム)ソフトです。

この同社のERPソフトを多くの企業が導入し、現在では大手企業の標準ソフトとして事実上、その地位を確立しています。

その顧客は世界で30万社を超え、世界的企業の8割以上が使用しているとされています

ですから、IT…情報技術部門の担当者なら知らない人はいないといわれている企業です。

 

ERPソフト関連収入が、2010年12月期の売上高約125億ユーロの9割近くでした。

その割合が2015年12月期には5割を下回りました。

しかし、それはERPソフト関連収入が減ったというのではなく、ほぼ維持しています。

では、何があったのか…

それは、「新事業」の躍進です。

 

新事業で新事業を創る…?

 

SAPの売上高の半分以上を占めるようになった新事業というのは、医療や鉄道など他分野の会社と協力して、新たな事業の創出です。

 

例えば、アディダス(Adidas)と協力して新サービスを開発しました。

その新サービスとは、「マイアディダス」。

アディダスのオンラインショップで、スニーカーを自分好みにデザインできるというものです。

多くの種類を揃えつつも少量生産しなければならない状況を、注文情報と生産現場を直接連携させることで克服し、新サービスを成功させたのです。

 

他には、イタリアのタイヤメーカー大手のピレリ
PIRELLI
とも新サービスを創出しています。

タイヤの空気圧を調べるためにセンサーを取り付けて、同社のタイヤを利用する人にタイヤの交換時期を知らせるというのもです。

 

また、スポーツの分野では、サッカーのドイツ代表と連携して、試合映像を確認しつつ選手の移動距離やパス成功率などのスタッツを同時に確認できるソフトを開発したのです。

これにより、敵との間合いの詰め方やポジション取りなどの戦術理解度を深めることに貢献したのです。

実際、2014年のブラジルワールドカップで、ドイツ代表は優勝しています。

この後、SAPのスポーツビジネスは急拡大し、世界屈指のクラブチームのバイエルン・ミュンヘンやマンチェスター・シティと提携しました。

 

このようにSAPは色々な企業と協力して新たな事業を創り出しているのです。

 

SAPと同じような事業をライバルであるOracle(オラクル)やIBMも行っています。

しかし、ここ5年間の売上高の平均成長率はSAPが年率約10%なのに対し、オラクルは1%ほど、IBMはマイナスです。

 

なぜ、SAPがオラクルなどを置き去りにするほどの成長率を出せたのでしょう?

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2つの強み

 

SAPの成長率の元は、他にはない2つのストロングポイントがあったのです。

 

SAPのストロングポイントの一つが、2010年に発売した

「SAP HANA(ハナ)」

です。

 

このSAP HANAは、全データをメインメモリ上に保存し、データを高速処理できるようにした企業向けのデータベースです。

この製品の特徴はまさにデータの高速処理です。

 

同社のスティーブ・ルーカス・プレジデントは、従来の製品と比べてると「ケースによっては10万倍ほど速くなる」と話します。

700万人分のデータを分析するのに50分必要だったある医療機器メーカーの処理が、15秒で終わるようになったのです。

他にもHANAを導入した航空機メーカー大手のエアバス社では、3週間はかかっていた年次決算の集計が4日で終わるようになりました。

 

なぜこのように高速化できたのでしょう。

従来の製品の場合は、データをハードディスクに保存していため、ハードディスクから読み込んだり、書き込んだりする処理に時間を必要としたのです。

しかし、HANAの場合は、全データを高速処理できるメインメモリ上に保存し、ハードディスクからのデータの読み込み・書き込みを不要にすることで高速化させたのです。

 

また、CPUの性能・数を上げるすることでデータ処理速度を向上させることは可能ですが、コストや手間の面から「HANAを使う方が圧倒的に有利」と同社のベアント・ロイカート取締役は自信を見せます。

 

さらに、ERPソフトもHANA上で稼働することができます。

 

このようにデータを高速処理できるHANAを導入するメリットは大きいです。

そのため、HANAを導入する企業は多く、2015年12月末で約1万社となっているのです。

 

 

  出発点の違い…

 

素晴らしい商品を持っているSAPですが、それを利用してユーザーである企業に貢献するために提案力を高めたのです。

そこで導入したのが、デザイン思考です。

約8万人いる同社のほとんどの社員がそれを学び、業務に有効活用しています。

 

デザイン思考というのは、問題点の発見から解決に至るまでのステップを体系化したもので、革新的な解決へと手助けしてくれるツールの一つです。

一般的に考えられる問題解決の思考と大きな違いがあります。

それが出発点の違いです。

一般的な問題解決の思考では、採算性を出発点に考えたり、技術面から考えたりして問題を解決していこうとします。

デザイン思考の場合ではそうではなく、人がどんな時に良いと感じるのか、何を欲しているのかなど、問題解決の出発点を最終的な顧客のニーズから考えるのです。

これにより、革新的でありながらも、より温かみのある解決を導くことができるようになります。

 

例えば、イタリアの鉄道会社のトレニタリアの場合。

SAPとトレニタリアが議論を重ねた結果、顧客のニーズは「遅れのない運行」や「より多くの電車の運行」だとわかりました。

この課題を解決策の一つとしてできあがったのがデータに基づく車両点検です。

電車にセンサーを付けて、温度や車輪の摩耗度などのデータを蓄積・解析し、数値が一定の値に達した時に保守作業や車輪の交換などを実施できるように変わりました。

今までの走行距離や運行期間に基づいた定期点検よりも保守レベルが格段に向上したのです。

これにより、電車の故障頻度を大幅に減らすことができ、「遅れのない運行」や「より多くの電車の運行」という顧客のニーズに応えようとしています。

 

また、デザイン思考を導入したことにより同社社員の意識改革にも役立ちました。

知識がITに関連するものに限定されていた「従来の固定化した社員の意識を変える効果もあった」とチーフ・デザイン・オフィサーのサミュエル・イェンさんは話します。

 

さらに人事評価も変わりました。

例えば、従来はユーザーである企業のIT部門の幹部とどれだけ深い関係を築けているかが重視されていました。

それが、営業はユーザー企業の人事から経営企画まで、経営の根幹部分に関わる部門の幹部と良好な関係を構築することで評価されるようになったのです。

 

この高速処理できるデータベース、そして、より必要とされる解決を導くことができるデザイン思考による提案力というストロングポイントが、SAPの高成長率を原動力なのです。

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強みを支えるもの…

 

優秀な人材を引き付けて、SAPの成長の原動力となっているもの…

それは、働きがいです。

働きがいのある会社にするために同社は、組織の魅力を数値として測ることができる制度を導入しました。

 

組織の魅力を示す「会社への愛着心」「社員定着率」などの非財務指標を定め、目標数値を設定しています。

また、その目標数値を高める「社会貢献」「女性管理職比率」などの要素を定めて、この要素を向上させることにより、さきほどの非財務指標が向上するようにしているのです。

そして、非財務指標が高まることが、営業利益に好効果を及ぼすと数値化しています。

同社の2015年末を例にしてみると、女性管理職比率が前年比2.3上がりました。

それにより、福利厚生や労働条件などの要素を分析した非財務指標のビジネスヘルスカルチャー指数も72%から75%が上昇します。

このビジネスヘルスカルチャー指数が1あがると営業利益が7500万~8500万ユーロ(約85億~96億円)増加すると数値化しているので、約270億円も営業利益に貢献したという計算になるのです。

 

組織の魅力を高めるこの指標を示し、取り組むべき要素を明確化したことで、優秀な人材が集まるようになったそうです。

 

 

すでに戦いは始まっている…

 

現れてから十数年、着々と普及してきているクラウド。

クラウドサービスというのは、自分のコンピュータで使っていたデータやソフトウェアを、インターネットを介してまるでクラウド…雲にでも保存して使っているかのように利用できるサービスです。

 

このクラウドに対処するためにできたのが、新事業だったのです。

また、それとともにSAPはクラウドERPにも相当の力を注いでいます。

これはライバルであるオラクルなども同様です。

 

これからのクラウドを中心とした戦いが気になるところです。

 

この記事を読んで

 

これまで順調だった事業はそのままに、新たに事業を開始して、その新事業も成功しました。

しかも、単に成功するだけじゃなく、今までの事業をもその中に取り込んで新事業の一部とすることができます。

だから、新事業と一緒に今までに事業も一緒に成長できます。

一石二鳥のすごい案だとおどろきました。

さらにそれだけでなく、今までの事業も時代に合わせて変化していっています。

 

また、新事業を進めていく上で必ず必要となるクライアント様への提案力をつけるためのスキルを伸ばしたり、評価の仕方を変えたりと、柔軟な会社なのだというのがよくわかりました。

日々刻々と激しく変化しているこの時代を生きていくためには、そんな柔軟さが必要なのだと痛感しました。

 

そんな柔軟で、新たなことに挑戦するSAPの動向が気になります。

ですから、これかもっともっと成長してほしいです。

 

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